第14回日本中医薬学会学術総会レポート

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2024年10月5日(土)~ 6日(日)、くまもと県民交流会館パレアにて開催された第14回日本中医薬学会学術総会に私、下城が参加させていだきましたので、ここに報告いたします。

 

テーマ:「中医学の叡智で限界を突破する」

当会からは、10月6日(日)に次の4名が登壇しました。

  • 藤本玄珠堂:藤本新風代表
  • 清明院:竹下有学術副部長
  • タケモトクリニック:竹本喜典医師
  • 洛和会丸太町病院 救急総合診療科:笹松信吾医師

 

 

鍼灸実技講演1(13:00〜14:30)

「名人の至技」と題されたこの講演では、瀬尾港二先生(アキュサリュート高輪)が座長を務め、丸山衛士先生(はり・きゅう丸山漢方堂 院長)と新風代表が登壇されました。

丸山先生は岡部素道先生の最後の内弟子ということから、新風代表もこの講演・実技を大変楽しみにしていました。

最初に丸山先生が「私の鍼灸」というテーマで講演され、実技を披露されました。

岡部素道先生の影響を受けておられる丸山先生ですが、その経絡治療には独自の工夫が施されており、特に脈診・腹診・経絡診に重きを置いておられる点が印象的でした。

熊本弁を交えながらの実技に参加者も感銘を受けた様子です。

 

続いて、新風代表が「体表観察の重要性および毫鍼術・打鍼術」をテーマに講演と実技を行いました。日本伝統鍼灸の「触覚を中心とした診断・治療技術」の大切さを強調しつつ、北辰会独自の体表観察法、撓入鍼法、過敏な体質に適応できる打針術・古代針術について紹介。実技の最後には、「東洋医学の原理を理解し、現代日本の環境や患者の体質に適応する臨床応用が重要である」ことを力説し、会場の注目を集めました。

また、新風代表には来年上海で開催予定の第15回学会での講演依頼もあり、瀬尾先生から「日本伝統鍼灸の逆輸入に期待します」とのエールが送られました。

 

 

 

次に一般演題ですが、当会からは

3名の先生がそれぞれ以下のテーマで発表しました。

  1. 「脾湿による起床時盗汗の一例」

発表者:竹本喜典医師(タケモトクリニック)

過食と関連して増悪する起床時の盗汗に対して、鍼灸治療に加え、香蘇散合平胃散が奏功した症例を報告。『万病回春』・『牛山方考』等の古典文献を用いての解説でしたが、「弁別が難しい一面がある。今後は、経過の中で、頭汗の部位や少陽経・陽明経の違いや経穴の反応で脾胃と少陽肝胆(三焦)の弁別ができないか観察を続けたい。」という考察が示されました。

質疑応答の際、「今回のケースなら〇〇のような漢方を使うのもいいのでは?」という意見が出ましたが、これに対する竹本先生の、「その方剤には麻黄が含まれているため、今回の主訴には適さないのでは」との答えが印象的でした。

 

  1. 「繰り返し夜間救急外来を受診する機能性ディスペプシアに対して鍼灸漢方治療が奏功した1例」

発表者:笹松信吾医師(洛和会丸太町病院 救急総合診療科)

笹松先生は講演の中で救急外来において鍼灸臨床を行う意義を示されました。

その中で北辰会方式による顔面気色の確認・舌診・腹診がいかに重要かを、腹部エコーの写真や動画も使ってわかりやすく解説。「東洋医学的画像診断は今後進化し、体系化される」、「そしてそれは、西洋医学に追いつき、更に追い越す為の一つの材料となる」と力強く発言。今回、症例中で示した治療前後での腹診のツヤや膨隆、臍の深さなどの変化に対して、中医師の先生方も非常に興味を持たれていました。

  1. 「フィッシャー症候群に鍼灸治療が奏功した一症例」

発表者:竹下有先生(清明院)

日本では、フィッシャー症候群の鍼灸治療報告は少ないのだが詳細な弁証論治を行い、本質を捉えさえすれば鍼灸治療でも十分改善できることを実例を以て証明。治療経過の眼瞼下垂・複視の変化動画(初診から約2ヶ月間)には参加者からも感嘆の声が上がりました。講義で紹介されていた治療介入直後の運動症状の改善が印象的でした。

今後、フィッシャー症候群のさらなる鍼灸治療介入や臨床研究、社会実装が望まれます。

 

 

 

 

今回、北辰会から4名が登壇し、活発な質疑応答が行われました。医師や薬剤師が多い本学会の中で、鍼灸師(北辰会方式)の立場から中医学的弁証論治・正しい知識と臨床経験を活かし、現代医学の限界に挑む姿勢が参加者のみなさんに伝わった学会になったのではないかと感じます。今後も北辰会、日本伝統医学、中医学の発展が促進され、東洋・西洋の両方の観点から医療の可能性が広がることを期待しています。

 

文責:下城

 

懇親会での一幕

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