第42回東方医学会学術大会に参加して

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11月24日(日)に東京の御茶ノ水ソラシティカンファレンスセンターで日本東方医学会学術大会が開催されました。

今大会のテーマは、「東方医学の精神文化と身体観」。

昨年、当会学術副部長の竹下有先生が会頭を務めた大会です。

今年北辰会からは、藤本新風代表が一般発表で登壇し、竹下有学術副部長と当会会員である増田卓也医師が座長を務めました。

藤本新風代表の演題は、「心神と気滞のバランスを考慮し、灸と鍼の併用で改善した自律神経失調症の症例」。

全身倦怠感・肩背部の凝り・頭痛の症状が出現し、11年前に自律神経失調症と診断され、デパス・サインバルタを処方され、効果は感じているものの、薬を手放して元気に日常を送りたいという思いで鍼灸受診に至った患者さんです。

代表はこれを、心血虚による心神不寧により、七情刺激に対して過敏になり肝鬱を生じ、痛みの閾値が低下した状態、と診立てて鍼灸治療を開始。

初診直後から身体症状が改善しはじめ、2カ月後には主治医と相談し減薬を開始、9カ月後にはサインバルタは廃薬、デパスも服用せずに過ごせる日が増え、元気に過ごし、外出を楽しめているという症例でした。

新風代表は、東洋医学的身体観である「形神合一」を強調され、全人的に患者の病態を把握した上で的確な処置をする重要性を説きました。

質疑応答の際には、質問の手がいくつも挙がり、反響の大きさを感じました。

「ベンゾジアゼピン系の薬は依存しやすくなかなか切れない薬なので、とてもすごい。感動した。心療内科などでももっと使われるといい。」

との称賛の声も頂きました。

自律神経失調症に対する鍼灸治療の有効性、また東洋医学的身体観を基にした東洋医学的治療の有用性・重要性も実感できる素晴らしい症例でした。

発表・講演とは別に、業者ブースには北辰会方式に欠かせない打鍼・古代鍼・鍼を製作・販売している株式会社いっしんさんが出展。出展ブースでは「刺さない鍼体験コーナー」を設け、坂井祐太正講師が実際に打鍼・古代鍼の施術体験を施していました。列ができるほどで、とても好評でした。

また、竹下有先生が講師を務める順天堂大学東洋医学研究会の医学生さんからの素晴らしい一般発表もありました!

座長・竹下有先生(左)

座長・増田卓也先生(右)

今大会の講演・シンポジウムでは、臨済宗住職、日本舞踊講師、日蓮宗住職、チベット仏教僧侶などの方々の講演もあったのですが、どの先生方もおっしゃっていることに共通したものがあり、またいずれも鍼灸医学・東洋医学につながるもので、とても勉強になりました。

日本舞踊講師の花柳先生は、日本舞踊での特徴的な目づかい4種類について、また、目ではなく心でみる離見の見について説明されました。先生のふるまいや佇まいからも勉強になることが多くありました。

臨済宗住職の重松先生は、禅修行を十段階に表現した十牛図を用いて説明され、我々施術者も患者さんをみながらどう成長していくのか、にもつながるようなお話をいただきました。

加えて、今大会会頭の田中耕一郎先生が「今みえてるものだけが身体ではない」とおっしゃっていたのも印象的でした。

私はこの講演を聴かせていただき、藤本蓮風会長の著書『弁釈鍼道秘訣集』を思い起こしました。

北辰会が行っている技術の一つ、「夢分流打鍼術」の始祖とされる夢分斎は禅宗の僧といわれています。その夢分流を通じて、医療をやる者は思想や宗教、精神文化などにも意識を配ることが大切だと、繰り返し学びましたが、今回の講演を聴き、改めて、東洋医学の背景にある世界を理解することがいかに重要かを痛感しました。

このような精神文化や身体観をテーマにさまざまな分野の先生方からお話が伺えるのも日本東方医学会ならではと感じます。

また、日本東方医学会は医師を中心とした学会であり、そこで東洋医学的身体観を基にした症例を新風代表が発表し、また北辰会の素晴らしさを医師のみなさんに伝えられたことはとても意義深いことと思います。

今後も日本伝統医学への理解を深め、その魅力が広く伝わることを願い、自分も精進しようと思います。

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