丸一日かけて「脈診」を掘り下げる!

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暮れも押し迫った2019年12月22日(日)、東京・大森の東京衛生学園で関東支部の定例会が開催されました。今回のテーマは「脈診」。

3人の講師からじっくり学びました。その模様をお伝えいたします。

(昨年同様、大勢の参加者(126人)が集まりました)

 

目次

脈診の歴史 その形成と発展

いつも楽しそうに講義される尾崎真哉先生、歴史的変遷をたどる解説の時には特に活き活きされたご様子が感じられます。

今回は、時代の流れを3つに分けて、

  • 古代脈診(黄帝内経以前〜三国時代)
  • 後世脈診(後漢以降から現代中医診断学まで)
  • 日本における脈診

 

ポイントを下記に定め、

・「脈診」の形成と発展過程

・歴代医家によって発明された脈診法

・「脈診」の発展と思想背景

 

「中国脈診学」内容を下記の通り解説いただきました。

1.「独主寸口脈診」の確立と発展

2.「脈証合参」を重要視

3.「脈経」による多彩性と多面性

4. 脈学の歌賦化・図象化による通俗化と流布

5. 病因病理を重要視した脈派・脈状の分類法

6. 四診合参の重要性

盛りだくさんの内容の中で、私が興味をひかれたのは、古代、強い王制が築かれていた頃には、祭事的に加持祈祷を行うシャーマンの権威が絶大で、

王室の衰退と古代中国哲学思想の発展とともに神秘主義中心の医術から、神秘主義の影響は残しながらも、段階的に医療実践・経験に基づく医学理論が構築され脈診学の形成にも影響していったという点でした。

同時代、西洋ではヒポクラテスが「体液病理学説」を唱え、やはり迷信や呪術と医学を切り離して臨床と観察を重んじる経験科学へと発展させ脈による診断を実践したといわれます。

西洋も東洋も同じ流れを辿っている面があるのだなあ、と面白みを感じました。

初学者にもわかりやすいように、膨大な文献の内容をわかりやすくまとめていただいたおかげで東アジアを中心に発展した東洋医学、そして「脈診」がたどってきた道筋について理解を深めることができました。

海外、特に中国の書物を輸入して自国の文化・学問を発展させてきたという経緯を持つ私たち日本人にとって、歴史的経緯を知ることは大きな意味を持つのだと気づかされました。

様々な脈診と胃の気の脈診

「なぜ橈骨動脈で脈診するのか説明できる?」

いつものように竹下有先生の鋭い問いから講義が始まりました。

先生から問われると、講義中ずっとその目的や意義について考えを巡らすようになるので、自然と気が引き締まってきます。

 

今回のポイントは3つ。

 

・現代日本の各種脈診法を理解する。

・胃の気の脈診の4分類を理解する。

・胃の気の脈診の実際を理解する。

 

私が鍼灸学校の実技で習った脈診といえば「六部定位脈診」、「脈状診」が中心で、それが脈診だと思っていました。

 

しかし、脈診法には大きく下記のように3つに分類され、

 

・全身の動脈拍動部を診る「遍診法」

・『傷寒論』の序文に出てくる「三部診法」

・橈骨動脈を診る「寸口診法」。

 

その中から更に、様々な脈診法が存在していることがわかりました。

 

北辰会では、1983年に藤本蓮風会長が「胃の気の盛衰を診ることこそが脈診の本質である」と考え、「胃の気の脈診」という脈診法を提唱しています。


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「胃の気の脈診」の原理は各古典と、張景岳の脈論から求められました。

 

「胃の気」とは生命力そのものを指し、北辰会では

 

・「胃の気」の「盛衰」を診察できること。

・全身の気の歪みの状況を知り、適切な治療処置を行えること

 

を「胃の気の脈診」の最大意義としています。

 

張景岳の理論に基づく「弦急脈」を拡大解釈し、第1脈から第4脈まで4分類された基準を採用しています。とてもシンプルな判断基準なのですが、私はそれぞれの違いについて実感できなくて、未だに複雑なものに感じています。

でも竹下先生の解説を聞くうちに、買ったまま全部読み通せないでいる「胃の気の脈診―改訂増補版―」(2002年刊)を読み返し、実技練習で先生方に質問していこうと感じました。

 

切診指南〜鍼と共鳴する脈診〜

 

最後は、藤本新風代表による講義と公開臨床と脈診指導です。

講義では、鍼を中心として脈はどうなのか、というところを古典で確認しながら説明して下さいました。

 

昨年の冬季研修会時、藤本新風代表の脈診を受けたことがあります。
私の脈は、沈んで弱く、大抵の人に取りづらいといわれます。
しかし新風代表は軽く脈に触れて身体の状態を把握した後、サッとしかるべき穴に刺鍼しました。
あっという間でした。

 

「あたかも春風に誘われてやってきた蝶がそっと羽を休めに止まったかのような軽いタッチでありながら、どうしてそこまでわかるのだろう?」

 

そのような関心を持っていたので今回のお話を興味深く聴くことができました。

 

講義のポイントは以下の4つでした。

・刺鍼と脈診

・脈と病症が合わない場合

・切脈指南

・脈診と刺鍼(実技)

 

「我々は皆『黄帝内経』に始まる東アジア伝統医学の弟子なのです」

と、強調される新風代表は、『黄帝内経』、『難経』、『千金翼方』などの古典の記述と照らし合わせながら刺鍼(打診、古代鍼、灸、その他)と脈診がいかに密接に関わっているのかということを順々と紐解いていかれました。

 

鍼灸臨床において、脈診は本来必ず行われるべきものであり、鍼灸の先人たちは脈診を通じて治療技術を磨いていった事がわかりました。

 

新風代表の「切診指南」解説で、次の公開臨床への期待が高まりました。

公開臨床

1人目の方の症状は、冷え、肩こり、慢性腰痛、疲れやすいなど。

四診をして弁証、配穴にいたるまで、新風代表は丁寧に診て分かりやすく説明して下さいました!

そして治療は、下焦の寒湿をさばき腎を補うため、右天井穴に刺鍼。

 

置鍼したのち抜鍼すると、表情もやわらかくなり、体表所見も改善され、身体も楽になられたようでした。

終了後、代表が確認したところ、「腰が軽くなった」と仰っていたようです。

寒湿腰痛ですので、排尿によりさらに軽くなったことでしょう。

 

 

2人目の方の症状は、頭痛。

同じく四診合参をして、肝が慢性化して脾胃に負荷がかかっている状態と診立てられ、筋縮穴に古代鍼かざし。

 

被験者の方に感想を伺ったところ、

「ちょうど頭痛がしていたのですが、新風先生に古代鍼をして頂いた瞬間、スーッと楽になりました。首肩の緊張も緩み、息も吸いやすくなっていました。

ベッドから起き上がると、視界も明るく広くなって、心も落ち着いていました。」

と、一本の鍼で体も心もこんなに楽になるのかと感激されていました。

 

鍼のあとに舌の腫脹が引いていて、会場からどよめきがあがっていたのも印象的です。

 

脈診指導

脈を診るときの姿勢や指の当て方などを、その人その人に合わせて指導されていました。

 

「脈の診方1つで変わっていく微妙なもの。その延長に古代鍼、打鍼がある。」と代表が仰っていたのが印象的でした。

 

関東支部忘年会

今年も他流派の先生方も来て下さり、また講演も忘年会も過去最高の参加人数で、今年の最後を締めくくる大盛況の1日となりました(*´ω`*)

 

以上、ブログ課支部スタッフ和田と小倉がお伝えしました!

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