石川県鍼灸師会 第2回講習会(奥村先生)のレポート

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石川県鍼灸師会の第2回講習会が金沢で3月30日(日)に開催され、当会学術部長・奥村裕一先生が登壇しました。

この何年か、私自身が講演する際 、奥村先生にオブザーバーとしてご同行をお願いすることが多いのですが、今回は、奥村先生の講演をオンラインではありますが、視聴させていただきました。

講演に先立って、後世派で知られる曲直瀬家と金沢の地との関係、また奥村先生の父方のご実家が越前福井であることなどお話しされました。参加者が親しみを感じるように工夫されたアイスブレイクに感服するとともに、過去の医家達がどのような時代にどの地域で活躍し、どういった疾患を治してきたのか、という意識持つことの大切さを奥村先生は暗に示されたようにも感じました。

「北辰会における各種診察法の意義と特徴」を講演のタイトルとし、北辰会方式鍼灸の特徴について紹介し、その後は主として各種体表観察の臨床的意義とその実際について詳しく話を進められました。

望診では、顔面は人体のなかで最も陽部であるため、そこに現れる気色は少し薄暗く(陰の状態に)すると診やすく、また舌診は口内に隠れた陰の部位にあるため、ライトで明るく(陽の状態に)すると診やすいと陰陽論を駆使してわかりやすく説明されたのがたいへん印象的でした。

気色診について、フロアから出された質問に対しては、質問者(北辰会の学生会員さん)を被検者として気色診の実演をされ、診方のコツを丁寧に説明されました。

次に話されたのは、胃の気の脈診についてです。胃の気の脈診については、当会蓮風会長が『胃の気の脈診』のなかで、寸口脈診は胃の気の微妙な盛衰を示すものであること、臨床において非常に大きな意義があることを詳細に述べており、北辰会はそれを継承しています。

その重要性は、『内経』に始まる中国大陸の古医書にも記されていますが、奥村先生は日本歴代の医家らも胃の気を重視してきたことを強調し、中茎謙が『切脈一葦』中で描いている「陰陽正邪一源之圖」について、どう理解すべきかご自身の見解を披露され、虚証・実証のいずれであれ、重要なのは胃の気の有無であると述べられました。

奥村先生の話に、なるほどと納得すると同時に、なぜ会長が脈診においてわざわざ「胃の気」を強調されたのか、『胃の気の脈診』が書かれた当時の鍼灸界の様相について思いを馳せました。

このほか、「膜」と「膏肓」や各種腹診の関連性についても話しされました。奥村先生が専門的に研究されてきた内容であり、参加者の皆さんにはもしかするといささか難しく感じられたかもしれませんが、たいへん含蓄のある素晴らしい内容でした。改めて北辰会でもぜひ時間をかけてゆっくり講義していただきたいと思います。

その後、北辰会の1本鍼や打鍼・古代の紹介をされ、休憩を挟んで、腰痛の患者さんをモデルに、公開臨床が行われました。講演の中でお話しされた内容を踏まえて、丁寧に進められたので、参加者の皆さんにも非常に理解しやすいものでした。

左側屈で右腰部に牽引痛のある状態でしたが、左不容(付近)へ叩打しない相引きの鍼により、痛みはその場で瞬時に軽減(※その後痛みは消失したとのこと)。残念ながら、時間の関係上、臓腑経絡学と空間論、夢分流腹診との関係を鑑みての一穴であり打法であることまでは解説されませんでしたが、モデル患者の、なにが起こったのか、にわかには信じ難いという表情が、奥村先生の鍼の的確さを物語っていました。また、北辰会のアドバイザーだけあって、佐野善樹先生のカメラワークも見事でした。

近年は各都道府県の鍼灸師会などの業団や学会の地方会からのオファーが増え、地方に出向いて北辰会の実技や講演をする機会も増えています。アットホームな空気感であることが多く、フロアから忌憚のない質問もよく頂きます。質疑応答から普段意識もしていないような学びを得ることもしばしばです。皆さんもお住まいの地域で北辰会講師が講演する際にはぜひ参加してみてください。

文責:藤本新風

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