第48回日本伝統鍼灸学会は沖縄で開催される予定でしたが、新型コロナウィルス感染症の影響で急遽東京に会場を変更、会場参加の人数を制限し、オンラインと会場とのハイブリッド開催となりました。
今回、伝統鍼灸学会の学術部員として参加してきましたので報告いたします。
今大会のテーマは「COVID-19に対して伝統医学は何ができるか」。
会場での講演内容は次の通り。
会頭兼会長講演
「COVID-19と「養生」の思想」
演 者:形井秀一
座 長:浦山久嗣
国際部講演
「COVID-19に対する世界各国の鍼灸関係者の取り組みについて」
演 者:斉藤宗則:中国とWFAS
座長兼演者:中田健吾:上記以外の国
シンポジューム
「COVID-19に対して伝統医学は何ができるか」
演 者:石原克己 :主として伝統医学(傷寒論、温病等)の立場から
戸ヶ崎正男:主として伝統医学(鍼灸、養生)の立場から
座長兼演者:松田博公 :「感染症に対する社会現象について」ジャーナリストの立場から
それぞれ立場の違う先生方が講演されましたが、全員の先生が今回のような未知の感染症であっても伝統医学によるアプローチが可能であると強調されていました。
今回の伝統鍼灸学会で、北辰会は藤本新風代表が「外感病(風寒表証)に対する伝統鍼灸治療の実際」というテーマでビデオデモを行いました。
このビデオデモは来年初頭にEラーニングにて公開予定ですので、お楽しみに!
ところで皆さん、風寒表証の概念を覚えていますか?
外感病と聞いて何のことかスパッと答えられますか?
ここでちょっとだけおさらいしておきましょう。
外感病というのは寒暖、湿気など外因によって起こる病気のことで、要は「外からの邪気によって発病する疾病」です。
「外」から邪気を「感受」することによって生じた「病」ですね。
外邪については、来年2月のEラーニング講義で竹下有先生が「六淫の外邪と内生五邪について」というタイトルで詳しく説明しますので、ぜひ試聴してください。
それを待ちきれない方は、「北辰会方式理論編」で調べてみてください!
風寒表証というのは外感病の一種で、風寒の外邪が皮毛に侵入し、表衛を阻滞・失調させた状態のことを言います。
風寒表証は更に表寒実と表寒虚の2種類に分けられ、症候も治則治法も異なります。
ここで間違えると病を悪化させてしまうこともありますので、しっかり押さえておきましょう!
さて新風代表のビデオデモに話を戻しましょう。
最初のデモ中では流れるように体表観察を行いながら体表所見の見所を述べています。
経穴のこと、腹診のこと、空間のこと、舌診のこと、脈診所見の特徴などなど、どれも風寒表証を弁別するために重要なことばかりです。
そして一穴に置鍼し、抜鍼後に効果を判定。
判定においては、体表観察所見はもちろんのこと、増悪因子の変化についても確認しました。
北辰会方式では多面的観察を推奨しています。
これによって診察の確度が向上するのはもちろんですが、多面的観察は診察法の自主トレーニングにも応用できます。
例えば脈診が苦手であっても、その他の診察法で診断・効果判定ができるようになっていますので、そこから脈診所見の手がかりを知ることができます。
このビデオデモのケースで言えば、脈浮がわからなかったとしても、その他の所見に風寒表証の所見を確認できれば、脈浮が存在している可能性が大だと考えることができます。
そういった仮定から、「脈浮はこういう感じなんだ」と考えを巡らすことができます。
ですので、それぞれの所見の関連性を意識しながら診察する習慣、ひいてはそれが癖になるようにしておくことが大切です。
これができるようになると、得意な診察法を手がかりに苦手な診察法を上達させることもできますので、ぜひ取り入れてみてください。
新風代表は続いて3人の患者役に刺鍼デモ。
こちらでは、滅多に見ることのできない○○が……。
ここからはEラーニングで!
毎度のことですが、学会に参加してみると当会と他の諸流派との違いを再認識することができ、そこから有益な情報も多く得られます。
今回の学会では複数の団体から風寒表証に対する治療デモが公開されました。
同じ風寒表証の扱い一つにしても流派ごとに大きく異なります。
この違いを認識することが、自分の技術向上へのヒントに繋がることもありますから、今回参加されなかった会員のみなさんには、次回以降積極的に大会へ参加して頂ければと思います。