8月24日のブログで予告しておりました埼玉県鍼灸師会第二回学術講習会における藤本新風代表の講演が、9月6日予定通り実施されました。当日代表の補佐を務めた坂井が、実況モードでリポートします。
今回の講演は『経絡治療学会』学術部員の橋本巌先生、『東方会』副会長の津田昌樹先生、そして当『北辰会』の藤本新風代表と、日本における鍼灸の学術的研究と実践をリードする三団体が一堂に介してそれぞれの研究成果について講演するという初めての試み。ポスター通りまさに「百聞は一見に如かず」、参加者の探究心を満たしてくれる刺激的な講演会になりました。
昼食を摂りながらの和やかな打ち合わせの後、橋本厳先生、津田昌樹先生の順に講義&実技披露があり、藤本新風代表はトリとして登壇しました。
まずはデモ治療。患者役は埼玉県鍼灸師会の菊池友和先生です。
時間的な制約がある中で、問診に十分な時間をかけることはできませんでしたが、それを体表観察によって補完。肝脾不和+血瘀と弁証し、そこに北辰会独自の空間弁証を加えて右上の気血の偏在と判断、右章門へ寸6-5番にて横刺で瀉法(20分置鍼)を施したところ、その場で頸部の痛みとコリが改善。後日談ですが、菊池先生を悩ませていた下痢と便秘の繰り返し症状も改善したとのこと。
一見関係無さそうな症状であっても、病因病理において関連性が認められる症候であれば一穴で同時に治療することができ、さらにその予後を予測可能とする病因病理を構築することの意義と重要性を示すことのできた症例となりました。
また、本症例で血瘀の反応として施術した左三陰交について、新風代表は施術後の体表観察から、他所と比較して改善が乏しいとの所見を示し、その場で「完治までにはある程度の治療期間が必要になる」と診断。明確な診断学を有している北辰会だからこそ可能であることを参加者に納得してもらえるよい機会となりました。
短い時間の中で実演と講義を行わなければならない今回の企画。代表は20分の置鍼時間を使って「北辰会方式の考え方と基本手技」というテーマで講義を行いました。
講義では、「一穴」にて治療を行う優位性を中心に、北辰会の簡単な歴史と考え方、北辰会が提唱する新たな弁証方式である「正邪弁証」・「空間弁証」、また「打鍼」・「古代鍼」について、幅広く解説。その後再び実技に移り、今度は古代鍼・打鍼を実演、参加者との間で質疑応答が行われました。
今回の症例を通じて、少数鍼によって担保される北辰会方式の高度な論理性を明らかにできたこと、北辰会がグローバリゼーションに耐えうる「学」と「術」を有していることが参加者にしっかり伝わったと思います。これは非常に意義あることです。
さて、実演+講義の新風代表は橋本厳先生・津田昌樹先生との座談会に登壇。
座談会では、「何年でそれぞれの方式を運用して治療できるようになるのか?」という質問が出され、橋本厳先生・津田昌樹先生が「10年程度」と回答される中、代表が「私の考える真面目さがあれば3年」とキッパリと言い切ったのが印象的でした。これも、多くの書籍・資料に裏打ちされた知識、長年育成システムの構築に力を注いできた、それがこの発言に繋がったのだと思います。
育成側として活動させて頂いている私自身、実際に真剣に取り組めば3年でカタチになるという事を肌で感じています。
初学者の方は、ぜひそれを目標に取り組んでください。真摯な態度を「鍼」は決して裏切らないはずですから。
以上、埼玉県からのリポートでした。