「学医の治療効無しと謂ふの論」
桜咲くなか、2021年度を迎えました。
本年度も皆で集まっての定例会は難しい状況にありますが、さらに充実したオンラインコンテンツを用意し、会員諸氏に関わる患者の皆様、および会員諸氏の学術能力向上にに貢献して参ります。
さて、かの岡本一抱子の『医学切要指南』に掲題の論があります。
「彼の無学にして治療に効ある者は、其の天性自然と才覚にして意の働きある故に学ばざれども自ら臨機応変の理に通ずるが故なり。」
その意は、“医学を学んだ者よりも天性の才によって勉学せずとも自ら臨機応変の理を得て治療ができる”というほどのことと解することができます。
しかし、そう謂いながらも、 「然ども難病奇症の因を察し、病名を辨し、死生の遠きを知るに至ては、彼の有学の者と同日にも語るべからず。」
“しかしながら、難病や奇症の病因を察し、弁病し、その生き死にを判断するにおいては、普段からちゃん学習している者と同様であるわけがない。” としています。
我々鍼灸臨床家にとって、“学”と“術”は両輪である、というのは当会創始者・蓮風先生からの教えでもあるのはご存じの通りでしょう。 また、治療においても、冬のような陰寒の時季には陰病は治し難いが、陽病(陽に傾いた病)をこそ治すべき、とも。
平時において北辰会は、定例会を中心に“学”と“術”をバランスよくともに学んできました。 非常時において、集まって実技研修が開催出来ない今、何に集中すべきなのか、については自明でありましょう。
本来、「得其人乃傳.非其人勿言.」『霊枢』官能(73)というほどに狭き門・貴重な医学を学び実践せん、とするならばこそ! ゆめゆめ忘れてはなるまい、と自戒しつつ本年度も臨みたいと思う次第です。
代表理事 藤本宗家十五代 藤本新風