 
        「2025年度は、学会にいこう!!!」
この呼びかけを覚えてますでしょうか?
北辰会の先生が北辰会以外の場で、対外的にどのようなことを話しているのか、どのように振る舞っているのか、そして他の団体ではどういうことをしているのか。
竹下有先生が、役員講師研修会や定例会において、会員のみなさんに熱く語ってから数ヶ月。
10月の関西部会と同日開催、翌週には日本伝統鍼灸学会学術大会も控えている、それらに直接関わらない関東の講師が応えないでどうする!と、熱い思いに応えるべく参加してきました「第20回公益社団法人日本鍼灸師会全国大会 in いばらき Tsukuba」。
「求められる鍼灸、求める鍼灸 ー鍼灸と緩和ケアのコラボレーションを茨城から発信!!ー」が今大会のテーマです。
2025年10月4日(土)〜5日(日)の2日間に渡って開催されましたが、当会からは竹下有先生が5日に登壇しました。
演題は「北辰会方式の鍼灸治療の実際と医師ー鍼灸師の連携について」。
今回有先生に講演の打診をした今大会の会長である茨城鍼灸師会の会長坂本一志先生の挨拶文に「普段なかなか聴く事のできない」と位置づけられていた北辰会。
私は日本鍼灸師会の催しに参加したのははじめてでしたが、講演の場は参加人数に対して大き過ぎるホールということや、北辰会に対する理解度も低いこともあってか、どことなく疎外感を感じます。会場に来ていた徳島県鍼灸師会の会長でもある北辰会会員の堀本先生によると、茨城で開催されるときは参加者は通常より少ないようですね。
講演の内容は、北辰会の概要と、近年行っている医師との連携について話したあと、公開実技デモという流れ。
時間は1時間。20分話して40分で実技デモ、という配分を冒頭に伝えて講演に入りましたが、有先生の北辰会での日頃の講義でも思うことですが、この時間配分通りに、予定していたものをしっかり伝えきるところが秀逸なんですよね。
まわりの反応を見ながら時間をコントロールするというのは、実はそんなに簡単なことではないので、学会の場でもそれを崩さないところはさすがです。
概要では、弁証論治などの北辰会方式の特徴というより、北辰会が歩んできた歴史を伝える方にウエイトを置いていました。それは群馬県鍼灸師会の役員でもあった、初代北辰会関東支部長の中村順一先生(故人)への敬意と、あまり難しい内容を伝えても理解されないから、ということを講演後に伺ったときに語っていました。

医師との連携というところに関しては、順天堂大学との関わり、東方医学会でのことをさらっと紹介し、いざ実技へ。
モデルは主訴が左の腰痛という徳島県鍼灸師会の若手の先生。堀本先生が推したわけではないようです。事前打ち合わせはなく、その場が初対面。
痛みのきっかけ、誘発動作などの問診や動作確認をし、体表観察へ。各種診法を行いながらそれぞれの説明もそこでしていきます。
ここでもいろいろと配慮しているんですよね。患者ではなく患者役の鍼灸師ですから、みんなの面前であえてこれ以上聞く必要がないと思ったところはやめたり、体表観察上伝えても会場の先生たちが混乱すると思うところは伏せたり。
診立ては、肝と脾の問題があり、上下左右前後でバランスを崩している状態で左の章門を選穴。寸6-5番で横刺です。あえて難しい中医学的な四文字熟語は用いず、わかりやすく説明していました。
左上前に実熱としての偏りがあるけど舌は潤っていて、鬱熱をどう対処するかというより、内熱と気滞の存在によって動きの悪い水をいかに動かすか、ということを意識した、と後で語っていました。
治療後、前屈の可動域が増加、痛みも寛解ということで、実技を目の当たりにした会場の人たちが引き込まれていっている様子がその場にいてわかりました。

さて、他会の様子を知り得るというのが学会の魅力の一つです。今回日曜日に行われたもう一つの学術講座が「YNSA」。なんと北辰会より講演の時間枠が倍近くあります。
イントロダクション講座ということで、実際に隣の人を触り反応点を確認していく時間もあり、なるほどと思わせるところは確かにあり、一療法としての有用性は感じられました。
また、登壇している先生が実技をする場面を見ることができたのですが、やはりこういう場面で実技をする、というのはとても大変なことだと思いました。
もう一つこの学会で特徴的だったのが、市民公開講座があるところ。一般の人が聴講できます。今回の演題は「東洋医学ホントのチカラ 鍼灸の現在地と可能性」。登壇したのはNHKの番組「東洋医学ホントのチカラ」のディレクターである山本高穂氏。

何度か放送されていて、見たことのある人も多いかと思いますし、患者さんからそれについて質問されることもあるかと思います。
「鍼灸や東洋医学についてテレビで採り上げてくれている」ということはよろこばしいことではあるのですが、講演を通して改めて認識したのは、東洋医学としての鍼灸を伝えたいのではなく、鍼灸の有効性を現代科学の視点で解明して伝えたいというところです。
途中山本氏から座長に「東洋医学では痛みをどのように捉えているのですか?」という質問があり、この時、私の頭をよぎったのは「不通則痛」「不栄則痛」は不変的な鍼灸東洋医学の痛みの捉え方です。誰に問われようが変わりません。これは一つの事例ですが、自信を持って対応できるよう伝統医学の鍼灸としての学術を研鑽していかねばと強く思いました。
会が終わってから、有先生を通して何人か先生を紹介していただき挨拶をしたのですが、名刺を切らしてしまうという失態をしてしまいました。全国の熱量の強い先生と繋がれても、すぐに切れてしまうことになりかねません。みなさん気をつけましょう。

(↑↑今回座長を務めていただいた、(公社)群馬県鍼灸師会学術部長、木暮守宏先生と)
学会を通して、北辰会の学術レベルの高さを再認識するとともに、それは蓮風先生が土台を作り、諸先輩先生方の尽力によって築かれているもので、自分も乗っかっているだけでなく、そこに貢献できるようにならねばと思いました。
また他の講演を通して、それを応用して日々の臨床に活かせるのではないかと思うようなところもあり、新たな気づきも多々あり、非常に有意義な時間を過ごすことができました。
さらに講演中にQRコードを使ってリアルタイムでアンケートを取る手法を使ってる先生が何人か居られましたが、これは有効的に使えそうだなと思いましたね。

今回私がレポートの担当を買って出ましたが、自分なりのレポートをすれば良いので、会員の皆さんは臆することなく、変なハードルを自分で設けず、積極的に学会に参加してほしいと思います。
文責 𡈽田丈



