第38回日本伝統鍼灸学会に参加して part②

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part①からのつづき

 

さて、本題ですが、北辰会の発表は3題行われました。

当会からの発表は最終日の今回の大会の目玉のセッション「実技映像講演」を飾った藤本蓮風先生の日々の治療風景や弟子への鍼の教授シーン等が放映されて、いつもの様にかなり迫力のある映像でありました。

油谷真空先生の解説も落ち着いてわかりやすく、会長の平素からの鍼に対しての情熱と姿勢が十二分に伝わり、

真に「鍼狂人」という形容詞がぴったりだと会場の参加者は思ったように私の眼には映りました。冒頭にあげた伝統鍼灸学会の定義をまさに体現している様子が伝わったのではないかと思います。

 

他の北辰会の発表ですが、一般講演では橋本浩一先生は「臓気法持論の「起」についての検討と題し、『素問』・臓気法時論の「起」の字についての解釈をめぐり、日本の解釈と中国での解釈の違いを発表されました。

 

「起」という文字に関して日本人の感覚では「始まる」という字句の解釈をしますよね?

 

しかし。多くの中国の解説書ではこれを「治まる、癒える」に近い概念で理解するらしく

そのため四季の四時陰陽の旺気により「病が起こる」というよりも、「病が癒える」と理解されている歴代の文献が多いようで、この詳細は論文化されるようなので非常に楽しみですね^-^。

 

しかし、臨床家である馬蒔の『素問注証発微』では病が始まるとなっている話などは大変興味深かったです。

 

これは是非、中医学の文献学の先生と内経を重視している臨床家の先生と文化論的視点からも討論して欲しい内容だと思いました。

 

詳細は2019年10月(一社)北辰会本部エキスパートコースの「内経気象学」の講義の中で詳細に解説頂いていたのでよくわかりましたが、今回も非常にコンパクトでスムーズなご発表でした。

 

もう一題は、関東支部の坂井祐太先生の「小児期から続く健忘の一症例」発表が行われ、藤本新風代表が座長として参加されました。大変落ち着いて発表されておりましたが、

 

質疑応答の際、まさかの「三重県鍼灸師会の〇〇です。 !!!  このような病気に対ししかもたった一本の鍼で効果を上げておられることに非常に感服いたしました。

肝鬱の治療に後渓を使用されて効果を上げていますがその理由を教えて頂けますか?」と。

 

坂井先生は落ち着いて理路整然と回答されておられましたが、

 

この○〇先生の質問の様なハプニングは大変楽しい状況でした。( ´艸`)

 

 

後は、一般発表の座長として、奥村裕一学術部長、学術部講演の座長として竹下有副学術部長が参加されました。

 

私が述べるのも僭越ですが、北辰会の発表は総じて論理的で安心して聴講できる内容で楽しく拝聴させていただきました。

 

 

特に当会にとって大変印象的であったのは、

2日目の特別講演千葉大学、元東洋医学会長の寺澤先生の講演「和田啓十郎の医療観と鍼灸の新たな挑戦」の中で、寺澤先生ご自身の臨床の中で食道癌患者の呃逆(吃逆・しゃっくり)の症状でなかなか薬で止めることが出来なかった症例に対して鍼治療、その内容は膈兪に刺鍼後、遠赤外線灯で温めを即座に効果を上げたお話をされておりました。

 

千葉大学の漢方診療科での鍼灸治療の応用をお話しされました。

 

その後、「漢方医師は鍼灸師の事を理解しようと努めるが鍼灸師は湯液の事を理解しようとするものは少ないと。」のご指摘を受けました。確かに医薬事法上使用することはできないが、湯液の理論と基礎的なことは多くの鍼灸師が学んでおり、少し?????と疑問符が頭の中をよぎりました。

 

それは湯液家に比すれば、膨大な湯液の古典を身に着けているわけではないであろうから、確かに「さもあらん」と自答しながら聞いていました。

 

更に、講演は進んでゆくのですが、そのお話の続きの中で、

 

「私は鍼灸治療の事に理解を深く持つためにとして一冊の本を手にした。松田博公氏が日本の鍼灸地図を描くために書かれた2002年に岩波新書から発刊された『鍼灸の挑戦』を通読した。」と。

 

頭の中では「ああ、あの本は蓮風会長が紹介されている記事があり、当時、鍼灸ジャーナリズムとしてその発刊は、非常にインパクトがあり、蓮風先生や、当時北辰会会員であった、淡路島の内田先生が紹介されていたなと。」と思い出しながら聞いておりました。

 

寺澤先生は続けられます。

「その中に非常に素晴らしい流派があり、藤本蓮風先生の主催している北辰会のやり方はたった一本で鍼治療を行うのだと。それもきちんと診断治療を行い、一本しか鍼をしない流派が存在していることに非常に興味と関心をもった。さらに、鍼を行う理由が明確である。このようなやり方は非常に素晴らしいですね。」との内容が耳に入ってきます。

 

大変な賞賛と評価を頂き、会場はややどよめいた雰囲気になりました。

 

寺澤先生は、医学史的認識も非常に深く、その他の歴史への造詣も先生ですから、私も驚きと喜びで「北辰会が今の日本の鍼灸界で大変良い評価を頂いた」と鳥肌ものでまた胸が熱くなる思いでした。

 

その後。寺澤先生も治効機序はことなるので厳密には北辰会との同様の一本鍼とは言えないのですが、ご自身の一本鍼の話をユニークに楽し気に語られておられたのがまた、大変印象的で鍼の臨床の楽しさが伝わって参りました。

 

その後のセッションの大トリは北辰会の映像実技供覧「藤本蓮風の鍼術~発想と継承~」(解説:油谷真空先生)と題して発表があり、蓮風会長はいつもすごい気迫であるが、大画面で見るとさらにすごいインパクトでありました!!!

 

2019年10月にも本部エキスパートコースでその内容は紹介がありましたが、巨大な画面での映写は大迫力でまた一味違いました。

 

提灯記事を書くつもりはないが、「伝統鍼灸」の後世への継承映像を締めくくるのにはまさに最適であったとともに理想的な幕引きだったと感じました。

 

やはり「不参加だった北辰会の会員さんは残念だったね。」言いたくなるエンディングでしたよ。

 

そして、その映像終了後、最後に真空先生が、先日の代表の中国でのテレビ番組「杏林尋宝」出演について最後にコメントを付して終わられたのですが、中国、弁証論治の国で高評価を得たお話でまとめたのも大変インパクトがありました。

 

11月の本部エキスパートコースでも「杏林尋宝」について帝塚山学院大学リベラルアーツ学科杉本雅子教授とともに訪中した村井和ドクターからご報告がありましたがこの番組最後の評価の部分はお話しされなかった内容です。

 

聞き逃された先生方の為に僭越ながら簡単に内容を書いておきます。

 

以下内容:柳長華氏 元中国中医科学院中国医史文献研究所所長、党委員会書記

現中学医学出土文献、文物研究員、特任教授 国家無形文化遺産保護専門委員

以上の肩書を持つ中国の権威ある先生が蓮風先生の打鍼術を見た感想をこのように述べられた、

 

『特に興味深かったのは、日本から来た先生の腹部打鍼法。ポイントはどのように鍼をするか?打つか?ではなくあの動作に表れたように、如何に精神を込めて患者に向かい合うかだ。

彼は中医の伝統的基本的な思想に非常に合致したことも述べている。

 

 

病人によくなったか尋ねない、尋ねる必要もない。患者は必ず良くなっていることが解っているからだ。必ず良くなっている。

だから彼は必ず最後に脈をとる。そして、これで大丈夫と言った。これはとても伝統的な診断法だ。』

 

また、古代の張仲景以前の脈法に、主に鍼灸で行われた脈診法を用いたことも評価を頂いておりました。

 

この内容を最後に油谷先生は発表の幕を閉じられました。

 

本当に蓮風会長の鍼灸は国内外でも高い評価を受けていることが本当によくわかる一日でした。

参考URL  http://www.sohu.com/a/351802414_644319

 

part③へつづく

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